第2章 サービスについて考える ~ 1 本章のねらい

本章では「サービス・マーケティング」を考える時、「サービス・マーケティング」の根幹を形成する「サービス」について解明し、マーケティングを行う時に果たす役割を理解していただくため、「サービス」の内容、性格、影響力を認識していただくことをねらいとしている。
前章でマーケティング自体もいろいろな説や解釈があり、ひと口では定義づけられない旨の説明をした。
ここで取り上げる「サービス」も物財と違ってつかみどころのない代物なのである。
すなわち、あらかじめ手にとって見ることができず、購入してもその場でただちに消費され保有ができなかったり、加えて広範囲にわたるシェアを持つ精神的なパフォーマンスそのものであるからである。
われわれは日常生活で毎日のように「サービス」を体験している。
ただし、「サービス」そのものを意識して体験しているわけではない。
日常生活の中で体験している「サービス」を、確認の意味でそのいくつか例を挙げると、テレビを見る、電話をかける、電灯をつける、公共の交通機関を利用する、病院で診察を受ける、預金を引き出す、ランドリーに洗濯物を出す、などなど枚挙にいとまのないほど「サービス」を利用している。
これらはすべて個人のレベルで「サービス」を消費し、しかも「サービス」を意識することなく使っているのである。
目を転じて、複合的に「サービス」を組み合わせ提供している施設を探せば、その典型として多様な「サービス」組織を編成しているホテルが挙げられる。
一般的な都市型ホテルの組織は、大きく分けて宿泊部門、レストラン・宴会・婚礼などを束ねた料飲部門のような本来的な「サービス施設」のほかに健康産業としてのスポーツ施設、癒しと美容を提供するエステ・クラブ、物販のショッピング・アーケード、駐車場な
ど施設による「サービス」を組み合わせている。
さらに顧客の要望を満たす「サービス」として、よくホテルのメイン・ロビーで見かけられる顧客のさまざまな相談に応ずる「コンシェルジェ(欧米の高級ホテルで発達した顧客の相談係)」、幼児を預かる「ベビー・シツター」、顧客の荷物を一時保管する「クローク」、宅配便の代行サービスなどソフト面の「サービス」も複合的に組み合わせている。
このように「サービス」のネットワークはいたるところに張り巡らしてあり、いつでも、どこでも、誰でも目的に応じて気軽に利用することができる。
しかし多くの場合、多くの人は日常生活でこの「サービス」の存在自体すら意識せず、当たり前のように利用し満足している。
満足がある限り意識されないものなのかもしれない。
しかし一旦利用した「サービス」に不満があると、クレームの対象としてにわかに「サービス」の存在感が意識され明白になる。
食事をしたレストランでサービスや料理の質に期待した満足が得られなかったり、約束通り品物が配達されなかった、痛くないといわれた抜歯が痛かっだ、窓口の応対が横柄で冷たい、利用時間が短すぎる、面倒な手続きを強制されたなど、個人の「サービス」の質に対する価値観に大きな差異があるために、「サービス」を受けた時の心証でよくも悪くもなるのが「サービス」といえる。

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