先に述べた通り、マーケティングはアメリカで開発され普及した手法であるので、マーケティング・リサーチも当然のことながら、その源流はアメリカに端を発し発展して現在に至ったものである。
その起源は、 1911年にカーチス出版社が新たな商業研究部門を設置し、その責任者としてウィスコンシン高校の校長の経歴を持つチャールズ・C・パーリンを任命したことに遡るとされている。
当時いくつかの会社で、自社製品やサービスをどのようにしたら、マーケットを最も満足させることができるかを知るための方策として、マーケティング・リサーチが有効であろうと想定し始めていた。
その後、各社でマーケティング・リサーチを研究し、この活動がビジネス活動を開始するに当たって、その企画段階で必要不可欠かつ重要な活動であることを定着させたのである。
かくしてさらに種々の改良が加えられ、今日のマーケティング・リサーチの手法が確定したのである。
マーケティング・リサーチが現在、一般に広く採用され、洗練された手法に発展するまでには、多くの年月を要している。
初期のマーケティング・リサーチはまだ企業各社がこぞって活用する手法ではなく、単なるマーケットの研究資料にすぎなかった。
なぜなら、コンピュータやデータ・ベースも、現在ほど容易に利用できなかった第二次世界大戦以前では、マーケティング・リサーチで科学的なサンプリング法はまだ行える状況ではなかったからである。
1920年-30年代には、マーケティング・リサーチは企業の活動に重要な役割を与えられるほど、企業は関心を示す段階ではなかった。
しかし、一部の大企業ではこの領域の研究にスローテンポながら関心を示し始めていた。
戦後1940年代後半になって、企業各社のマーケティング・コンセプトが、マーケティング活動の重要な着眼点が消費者に軸足を置くことに、理論的な賛同を得られるようになり、マーケティング・リサーチも歓迎され、企業活動を行う際の重要な手段とみなされるようになった。
戦前ではマーケティング・リサーチに関連する企業活動に費やされた金額は、累計で700万ドルにすぎなかったが、1940年代以降1980年代までに使われた費用の総額は、 10億ドル以上とされているほど、マーケティング・リサーチはビジネスとしても発展してきた。
現在、アメリカの企業が新商品を開発する際の、マーケティング・リサーチに関する予算は、売上額の1%以下であり新しい技術や研究開発につけられる予算とは比べものにならない少額である。
実際に、1000万ドル以下の売上げ規模の会社では、社内に本格的なマーケティング・リサーチ部門を持つ企業はほとんどないのに比べ、 5億ドル以上の売上げがある会社ではマーケティング・リサーチ部門を持たないところは稀であるとのことである。
この現状を見れば、消費財専門メーカーで、企業内にマーケティング・リサーチ部門を持たない会社のために、この分野の業務を専門のビジネスとする、リサーチ会社やコンサルタント会社の社会的必要性が増大するのは当然といえる。
そしてかなり以前からこれらのマーケティング・リサーチ専門会社の存在が、アメリカのみならず、わが国を含む世界各国で常識化してきている。
マーケティング・リサーチに使われる費用は、業種によって異なるが、理論的には、生産財のメーカーよりも消費財のメーカーのほうが大きい。
そして消費者と密着している広告主は、消費財のメーカーよりもさらに多額の費用を費やしているとされる。
このように消費者に直接商品を提供する消費財メーカーや広告主が、マーケティング・リサーチに産業財のメーカーより多い費用を費やすのは、消費者のニーズ、ウォンツ、商品に対する評価などの情報が、商品企画の段階で決め手となる要素であることが認識され、ここにマーケティング・リサーチの必要性がはっきりしてくる。
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