「サービスが提供される場合、サービス従業員と他の顧客たちが存在するので、サービスのインプット(サービスを提供するのに必要なすべての資源《労働、原材料、エネルギー、資本》)、アウトプット(サービス・デリバリー・プロセスの最終成果)双方を標準化し変動性をコントロールすることは困難なものとなる。
物財の場合は、コントロールされた状態の下で生産が進められ、生産性とクオリティの双方が最適化されるよう設計されているし、顧客の手元に届くはるか前にクオリティ要件を満たしているかがチェックされる。
これに対し、サービスは生産されたその瞬間に消費される」
と述べている。
物財のようにあらかじめ画一的に設計し生産されてものを、定められた要件にしたがった検査を経て、顧客に一定の品質を保障した製品を確実に届けられるシステムがあるのに対して、サービスには異なる価値観を持った顧客ごとに、最終的なサービスの集大成をリアルタイムに提供しなければならないので、結果としてさまざまな手違いや予期せぬ見落としが発生しやすい。
このことはサービス組織では、生産性を高めながら品質をコントロールし、標準化されたサービスの集大成たる商品を提供することの難しさを物語り、物財とサービスのマーケティングの違いをはっきりと示している。
つまり電化製品を購入しようとする場合、顧客はカタログなり現物を見ながら、自己の使用目的にしたがって電化製品のサイズ、機能、価格、グレードを定めて選定し、保証書のついた製品を安心して購入し使用することができるが、レストランで食事する場合はそうはいかない。あらかじめ予約をしておもむいたとしても、顧客はそのレストランの常連でない限り、そのレストランの料理、サービスを熟知していない。
さらには当日の混み具合、同伴する人、時間、料理やサービスを担当した料理人、ウエイターによって提供される商品には大きな変動性要素が生じる。
ここがサービスの製品を標準化することを困難にする最大の要因なっているが、標準化できないことは必ずしも否定的な現象ではない。
個々の顧客の持つ固有のニーズや好みに合わせたサービスを、オーダーメード的に提供できる特性も併せ持っているからである。