「ふたりとも、”You are fired!”」

テキサスの5月といえば、暖かく初夏の彩りのある月のはずですが、今年は昨年に続き雨嵐の多い月となっています。テキサスの夏は灼熱地獄、干ばつになる年もあることを考えると今のうちに十分雨が十分降ってくれれば、節水などの規制も心配せず、夏の間はゆうゆうと水をたたえた湖を楽しむことが出来るので有難いことではあります。(テキサスにある湖はほとんど人工のものなのです。)

今年は、アメリカ大統領選挙の年。日本でもニュースで報道されて皆様ご存知かもしれませんが、アメリカの大統領選挙戦は大変なことになっています。今最終的に可能性があるのは、不動産王であるドナルドトランプ氏(共和党)と、全大統領クリントン氏婦人のヒラリー氏(民主党)の2名になっています。そして何とトランプ氏の優勢が現実になってきているのです。

トランプ氏は、以前「Apprentice」というビジネスリアリティーショーを爆発的にヒットさせ一般市民にも大変有名になりました。私もこのテレビ番組のファンで、とてもわくわくしてみていた覚えがあります。この「Apprentice」という番組では、実際に仕事を持っている20代、30代の働き盛りの男性女性が、オーディションで16-18人選ばれ、シーズン中約12週間に渡り、トランプ氏から与えられる様々なビジネス課題をクリアし、毎週の選抜を生き抜いて最後に残った1人が実際にトランプ氏の会社に1年間約2500万の報酬で採用される、というものです。「You Are Fired!(君はクビだ!)」。その週選ばれなかった人を名指しするこのセリフはトランプ氏のキャッチフレーズになり、アメリカ中の人達がこの瞬間を目撃するためにテレビの前に釘付けになったものです。

「Apprentice」に選ばれた人達は新卒の学生、プロフェッショナルを含め、さらにはMBA(経営修士号)を持っている人達もいて、見ていてもかなりレベルの高い内容でもありました。実際、放映されたケースをMBAの講義に使用した大学もあったと聞きます。事実、課せられる課題は生きたもので、この番組は内容ともにトランプ氏の評判を大きく上げるものとなりました。

さて、このトランプ氏、以前はメディアには大統領には興味がない、と言っていたのですが、大統領選が現実化してきた昨年からは本格的にキャンペーンを始め、共和党の候補として至る所で演説をして回っています。オバマ大統領の後、是非アメリカを新しく引張っていける人が出てくるのを期待しており、以前は彼も可能性があるかなという感じはありましたので私も注目していました。彼はお金が十分あるので、政治資金のためにあくどい事をする必要が無さそうです。そして、本人もお金は十分ありすぎてもらう必要ない、と豪語しています。

しかし、トランプ氏は、キャンペーンを始めてからとんでもないことを政治の目標にしています。アメリカにいる不当労働者を締め出す、メキシコとの境界に万里の長城のような壁を作る、輸入品(例えば日本車)に35%以上の超高い関税をかけるとか、人種差別ともとれる様なことを平気であげています。輸入品にかかった高い関税に対して対価を払うのは、まぎれもないアメリカ市民(アメリカにすんでいる私たち)なのにです。そして、「不当」であるとはいえ、アメリカの経済を支えているひとつは、彼らの安価な労働力にもあるのが事実なのです。オバマ大統領は、トランプ氏のこの状況に対し「大統領の仕事はリアリティーショーではない」と警告しています。教養のある人達は、トランプ氏の言っていることは一面的なことにすぎずそんなに単純なものではなく彼の発言自体問題であるなど判断できますが、困ったことに、アメリカには十分な教育を得ていない人も多く、残念ながらそのような人達の多くがトランプ氏支持に回っている状況と考えられます。彼の勢いは衰えることなく、前大統領のWブッシュの弟であるジェブブッシュ氏も、勝ち目がないとみると早々とキャンペーンを諦めてしまいました。

もし、トランプ氏が大統領になりこの勢いで発言にあるような他人種を排他する形でアメリカを率いるなら、どうなるか。そう考えた時、私の頭に浮かんできた人物、それは「ドイツの独裁者ヒットラー」。ともすれば、アメリカは危険な道をたどることになるかもしれない。アメリカ在住の日本人もそれにはもれず、アメリカには住んでいられなくなる可能性も出てくるかもしれません。トランプ氏側のことを書きましたが、対するヒラリー氏はヒラリー氏で国務長官時代にビジネスに個人メールを使用していたことでスキャンダルになっていて、国を率いる大統領になろうかという候補者がこのような有様では、アメリカの将来は前途多難であると本当に不安が募るばかりです。もし建国の父リンカーン大統領が生きていたら、きっと嘆かれることでしょう。「ふたりとも、”You are fired!”」と。

https://www.thestreet.com/story/13335121/1/if-donald-trump-was-president-here-s-what-would-happen-to-the-u-s-economy.html

(注:私は政治経済学者ではありませんので、ここに書いてある内容は個人の見解です。)

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